外国人専門の人材紹介会社の注意点(採用側)
目次
外国人専門の悪質な人材紹介会社や求人サイトの急増
日本で働く外国人の数は2020年の時点で約1,800,000人おり、その数は年々増えています。
そのことから、外国人人材を専門とする人材紹介会社や求人サイトも増えてきています。外国人人材を採用するうえで、信用できる人材紹介会社や求人サイトを利用したいのは日本企業にとって当然です。
しかし、近年の日本での外国人人材需要の増大で、信頼性の低い人材紹介会社の参入も増えており問題になっています。今回は私の私見も多分に入っている記事になっています。あくまでも一部の外国人専門人材紹介会社や求人サイトが悪質であるということをご理解いただいたうえで、注意しないといけない点はなにかをみていきましょう。
外国人専門の人材紹介会社に悪質な会社が多い理由
しかし、外国人専門の人材紹介会社を通すことで、就職後、採用後に問題が発生する事例が増えています。
現在の日本では転職業界が活況です。新卒の30パーセントが就職後3年以内に転職しており、優秀な人材ほど転職する傾向にあります。そういった状況で新たな人材発掘の場として外国人人材が注目されてきました。
とはいえ、日本における外国人人材市場は増加傾向にあるとはいえ、日本人人材に比べて圧倒的に少数派です。人材紹介会社や求人サイトからすれば、事業規模が小規模であっても、ブルーオーシャンな市場で参入しやすいのです。実際に外国人の経営者が人材紹介許可を受けて、小規模から外国人専門の人材紹介会社を立ち上げている例は急増しています。外国人経営者はビジネスにアグレッシブなのは結構なのですが、少々の違法行為もいとわず人材を紹介しているケースは決して少なくありません。
こういった問題は私たち行政書士(immigration lawyer)としても看過できない問題です。私がこのブログを書いている目的も、そのような違法問題への注意喚起を、採用する日本企業や日本で働きたい外国人に知ってもらいたいからです。
では次に、外国人を採用する企業側がどのような姿勢で外国人人材を専門とする人材紹介会社や求人サイトを利用すればいいかを考えてみましょう。
外国人採用の目的を明確にする
日本企業が外国人を採用したい目的はいろいろあると思います。その業種や目的により採用方法は違ってくるでしょう。
そのため、外国人採用の目的を明確にすることが重要です。どういった外国人人材が必要かにより、どのメディアを使った採用方法に力を入れるかが変わってきます。
私が外国人のVISAや就活のお手伝いをしてきた経験上、外国人を採用する会社には二つのタイプがある気がします。
1.外国人人材を雇うことで、会社に多様性をもちこみ、組織にイノベーションを起こしたい。
2.日本人人材が集まらないため、とにかく外国人でも良いので働いてくれる人材が必要。
1と2のタイプは外国人採用の目的が大きく違います。そのため、採用に利用するメディアも違ってきます。
採用の目的 | 対象になる外国人 | 利用する求人メディアの例 |
・将来の主力社員や社内イノベーション | 留学生 | 外国人専門新卒求人サイト、日本人向け新卒求人サイト、日本人向け新卒スカウトサイト、SNS、各大学キャリアセンターなど |
・即戦力1(外国人にしかできない専門性の高い仕事) | 転職外国人 | 転職求人サイト(外国人専門だけでなく、日本人転職サイトも)、 人材紹介会社、外国人専門新卒就活サイト、SNSなど |
・即戦力2(日本人の代わりができる人材がほしい) | 転職外国人 | 外国人専門転職求人サイト 、Indeedなど |
転職向け外国人専門の人材紹介会社、求人サイトは当たり外れが大きい
上記で述べたように、外国人を雇う場合、新人材用となる留学生に対して、即戦力候補の転職外国人のほうが、外国人専門の人材紹介会社が多くなります。新卒留学生(ここでは大学生以上を意味します)を取り扱う会社は多くありません。それとは異なり転職外国人に即戦力を求める場合、外国人専門の人材紹介会社、転職求人サイトの数は多くなります。その場合、その人材会社やサイトが信頼できるかどうか見極める必要があります。
怪しいかどうかの判断基準の例
特徴 | 具体的な例 |
1.まず採用ありきで話を進めてくる | 企業の本質的ニーズを理解しないなど |
2.外国人人材の国籍が偏っている | 毎回ベトナム人しか紹介してこないなど |
3.在留資格要件について、担当者が理解していない※ | 外国人の学歴経歴と、企業での仕事に在留資格がマッチングするか具体的な判断根拠がないのに採用を薦めてくるなど |
4.経営者担当者が外国人しかいない | 経営者担当者がすべて中国人で、客観的なアドバイスがもらえないなど。そもそも日本の労働関連法令を熟知しておらず、人材斡旋にしか興味がないなど |
※3について
外国人の学歴経歴が業務内容とマッチングするかどうかは最終的には入管の審査判断によります。しかし、入管手続き専門の行政書士(immigration lawyer)はその外国人の経歴が在留資格要件に足りうるかどうか、また日本企業での業務内容は範囲など総合的な意見を提供できます。
怪しい人材紹介会社、転職求人サイトを利用した場合の問題
このような外国人専門の人材紹介会社、転職求人サイトを通した場合、どのような問題が考えられるでしょうか?
1.外国人の取りうる在留資格要件が会社の業務とマッチングしない可能性がある。その場合、虚偽の内容で在留申請をしてしまう可能性がある。
2.外国人人材に対するアフターフォローがない。
3.日本企業に対する外国人人材の受け入れ体制に関するアドバイスができない。
4.履歴書や卒業証書の偽造書類を渡される可能性がある。
ブラックな外国人専門の人材紹介会社、転職求人サイトを利用した場合で最も深刻な問題となるのは、違法行為を伴う可能性があることです。在留要件がマッチングしないことをわかっていながら申請書に虚偽記載をしたり、偽造の履歴書や卒業証書を提出した場合「不法就労助長罪」になる可能性があります。
どうしたらブラックな外国人専門の人材紹介会社に引っかからないか
具体的な対処方法の例 | |
1.ひとつの人材会社だけに頼らない。 | いろんな人材会社、求人サイトを併用する |
2.日本人が使う一般的な人材会社、求人サイト、スカウト型サイトにも求人を出してみる。 | 日本人が使う人材紹介会社や求人スカウトサイトにも多くの留学生や転職外国人がエントリーしてきています |
3.自社サイトをしっかり作って、SNSで発信していく。 | 東南、南アジアの人はFacebook、欧米の人はLinkedInで採用情報をよくチェックしています。英語記載のページがあるとなお良いでしょう。 |
4.あきらなかにブラックな提案をする会社ははっきりと断る。 | 違法行為は断る。違法を知りながら雇った場合「不法就労助長罪」が適用され、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科せられます。 |
5.日本人の代わりを求めているのである場合、もう一度日本人人材の採用方法を検討する。 | Indeedなどを使ったネット求人を再検討する。報酬・待遇の見直しを図ることでかなりの採用率改善は見込めるはずです。そもそも外国人人材採用は決して低コストではありません |
6.自社の最寄りの大学のキャリアセンター(就職課)に求人を出してみる | すぐに求人が認められないかもしれませんが、担当者とコネクションを持ちつづけることをお薦めします |
前述したように外国人人材を求める目的は企業により違います。「外国人人材を雇うことで、会社に多様性をもちこみ、組織にイノベーションを起こしたい」会社は優秀な外国人を採用したいでしょう。
対して、そもそも外国人採用の理由が「日本人人材が集まらないため、とにかく外国人で代用する」という目的なのであれば、もう一度日本人スタッフ採用の方法や採用条件の再検討をおすすめします。そもそも外国人人材はコストもかかり、管理もたいへんです。給与だけではなく、教育・管理・時間的コストを考えた場合、日本人スタッフの給与体系や勤務体系を見直すことで、日本人を採用することに注力するほうが良い結果となる場合も多くあります。Indeedなどを使ったネット求人を再検討してみてください。
この中で3.の「自社の既存のキャリアアップ制度や評価制度」は以外に思われるかもしれません。そんなところまで手を伸ばせないよと思うかもしれません。
しかし、外国人は日本人以上にキャリアアップや評価制度に関してシビアに考えています。社内の自分の先輩が、何年もキャリアアップできず評価されていない、とわかれば「この会社には夢がない」と思ってさっさと辞めていくケースをよく聞きます。
社内へのイノベーションを生むためには、外国人を含め社員がモチベーションをもって働ける新しいキャリアアップ制度や評価制度の検討導入は不可欠ではないでしょうか。外国人採用をすることによって、会社の従来の制度の見直しをするいい機会にもなるはずです。
■インターンを活用した採用方法
はじめて外国人人材を雇用する経営者にとって、まず心配なのが「外国人がわが社にマッチングするだろうか」ということでしょう。
実際に外国人の採用は「文化の違い、言葉の壁、能力の適正、社員との人間関係、キャリアアップ制度」などたくさんの難問があります。
そんな中で弊所がお客様にこれまでお薦めしてきた外国人採用方法が「インターンシップ活用」です。この外国人インターンシップは日本人の大学生が大手企業などに就職活動前におこなっているなんちゃってインターンシップとは違います。
ガチで採用を前提としたトライアルとしてのインターンシップです。私がこの在留ビザtoキャリア大阪で留学生の採用をお薦めしている理由はここにあります。
※ここでいうインターンとは在留資格にある『特定活動(9号・インターンシップ)』のことではありません。
■留学生をアルバイトで雇ってみる
弊社がおすすめするやり方は留学生を留学生VISAの間に自社でアルバイト雇用して、自社の仕事にトライしてもらうというものです。
留学生の間だけ使える「資格外活動許可」という許可があり、この制度を利用しようという試みです。なお「資格外活動許可」では風俗営業での就労は認められ前ん。風俗営業には、キャバクラ、ダンスクラブ、バー、パチンコ屋、ゲームセンターなどが当てはまります。
このように本採用前に使用期間として人を雇うということは、いたって当たり前のことだと思います。
しかしこの当たり前のインターン採用は、どこの人材紹介会社も推奨していません。なぜなら、彼らにとってお金にならないからです。人材紹介会社としては外国人が社員として採用されてこそ報酬が発生します。
上記のような、トライアルとしてアルバイトでインターン採用をした後、マッチングした人材を採用という方法は人材紹介は存在しません。
金銭的なコストがかからない分、時間的コスト、教育コストはかかります。しかし、人材紹介による外国人人材ではわからない「人間性」を事前に判断できるのが、インターン活用です。
■はじめての外国人採用のときこそ、専門家に相談するのが大事
なぜはじめての外国人採用時に専門家が必要なのか?
- 外国人が日本で働ける内容はVISA(在留資格)の種類によって違い、自社にマッチングする人材か判断が難しい
- 外国人人材の在留を規定する入管法は改正も頻繁にあるため初めての外国人採用の企業には難しい
- 採用後もVISAの更新や、諸手続きに気を配る必要性がある
- 外国人の人材紹介会社はそういったデメリットを伝えてくれない ※悪質なブローカーが多い
外国人採用で気をつけないといけないことは、外国人の雇用は日本人のルールとは違うということです。労働基準法などはもちろん、在留外国人へのルールである入管法などの特別法にも気をくばらないといけません。もし知らない間にこれらの法律を犯した場合、刑事事件にもなりかねません。
そのため初めての外国人採用のときに、在留資格(VISA)専門の行政書士に相談することが大切です。
お問い合わせ
就労VISA(在留資格)のご質問及びご依頼などお気軽にお問い合わせください